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遺跡発表会「発掘された関東の遺跡2016」@江戸東京博物館

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遺跡発表会「発掘された関東の遺跡2016」 に出かけた.
発表された遺跡は「発掘された日本列島2016」で取り上げられている遺跡であった.
後日,「発掘された日本列島2016」に出かけたので感想も交えつつ,概略を記す.


河原口坊中遺跡(相模川左岸)

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弥生時代河遺跡(深さ最大5m

→しがらみ状遺跡…編まれている

・弥生時代後期と推定

・縦材等間隔

・横材60cm近く

・袋状につくられている部分がある…魚猟施設


弥生時代中期…竪穴式住居,方形周溝墓

しがらみ状遺跡より古い…大型槽,木製鍬,農具,掘立柱建物の柱材,一木ばしご,櫂状木製品,杵と臼,紡織具(機織具),朱漆塗りの木製品

卜骨(複数点),鹿角製剣把,柄付き環状石器,小銅鐸,鉄斧

現在でも使用されている魚猟施設とよく似ているというところが,当時の技術力を全く馬鹿にできないと感じさせられる.
実際に使用された卜骨も発掘されていることから,後の邪馬台国につながってくような文化力が関東にもあったことが面白い.


有馬条里遺跡

古代条里制が残っている地域

榛名山 二つ岳の噴火

6世紀初…降下火山灰,火砕流,泥流

  ↓2030

6世紀中葉…降下軽石,泥流


6世紀噴火直前

溝…畑が展開(その前は竪穴式住居)

6世紀中葉の噴火直前

水田は小さな区画 淡水面を狭くする 傾斜地

高い部分に水路…噴火で埋まったが2030年以内に復興

6世紀中葉に堆積した泥流上面

竪穴式住居,集落域として復興


噴火からの復興遺跡…前橋市総社北川遺跡,千足遺跡,高崎市下芝天神遺跡,金井下新田遺跡,金井東裏遺跡


地域豪族の地域開発の真っ最中…豪族手動での復旧作業

古代の人々も自然災害から復興してきたということが,連綿と続く人の営みを感じさせてくれる.
どのように土地利用をしていくのか試行錯誤している様子は東日本大震災後の土地利用を模索する現代日本人と同じであるように感じる.

神屋遺跡(常陸国信太郡小野郷)

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奈良・平安時代

竪穴式住居74

土玉637点…全体の9割 13cm 30g以下:小型の魚の刺し網漁

管状土錘…全体の1割 51cm 50g前後:コイ・フナの引き網漁


紡錘車

8C前葉 13車 3

↓建物少なく紡錘車が出ない

9C中葉 21車 7個 糸を紡ぐのが盛んになる

後葉 17車 8

元々は赤く塗られており、「大刀自」とヘラ書きされているものが発見される→女性の有力者がいた

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大型円形土坑

→火のし(古代のアイロン,長さ27cmくらい),緑釉土器など:祭祀埋納(10世紀前葉)

火のしのX線調査

最初は2つの鋲でとめていたが改良し3つの鋲へ

木製の取っ手(少し木が残る)

その他…墨書土器,施釉陶器,人面土器(災いから逃れるため埋める:祭祀)


・漁労中心

・糸や布による生産・経済活動

・信太郡太野郷→正倉院,中家郷→法隆寺:調庸

・緑釉陶器をもてる,読み書きできる有力者,大刀自のような有力者:経済的に有利

X線調査から火のしが改良されたことまで分かるとは科学技術とはすばらしい.
糸や布の生産活動が盛んな地らしく,火のしを祭祀埋納しているというのが面白い.


発掘された日本列島みどころ解説
乙訓古墳群 古墳時代前期~終末期

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400年にわたって古墳が築造された

古墳が築造された場所が少しずつ移動・大王墓の地域移動とリンク,影響を受けている
水鳥の埴輪の表情が可愛らしい


中山瓦窯跡 奈良時代

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平城京(大極殿)に瓦を供給していた

最古の鬼瓦…奈良時代初期は鬼の全身であった


中津居館跡 南北朝

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45万枚の銭(45百万円分):百文を一束(97枚ずつ…手数料が引かれている)

大量の輸入銭を納めた備前焼壺


伏見城跡(指月城) 安土桃山~江戸時代初頭

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多数の金箔瓦

→赤い漆を塗って金箔を貼っていた…漆のみ残っている


大萱古窯跡群 安土桃山~江戸時代

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国宝「卯花墻」が作られた窯元

瀬戸黒,黄瀬戸,志野:窯道具,窯の構造変化など


旗本花房家屋敷跡遺跡 江戸時代

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「地下室」信楽焼壺に黒色火薬

花房家:鉄砲に関する役職:火消しをしていない時は鉄砲の練習をしていた

→火薬を身近に置いていた(湿気の多い地下室で安全に保管した)


徳川幕府安定・1686年花房家は落ち度により逼塞・小普請に降格…しばらくの間無役でいた,火薬をしまったままになった

幕末に需要が増えても忘れたままになっていた(掘り出した痕跡がない)


石峠Ⅱ遺跡 縄文時代早期~中期

特殊な複式炉(実際の機能は分からない)


高橋遺跡 縄文時代

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男性土偶の発見


横野山王原遺跡

「天地返し」の痕跡

畑の復興…かなり深く掘り込んでいる


多賀城

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日本三代実録:朝廷による復興→京から官人が送られる

新羅人瓦工の派遣

地震の直前→博多で瓦職人がつかまる…多賀城に送った

→文献とあう発掘成果


「発掘された日本列島2016」は発掘速報の意味もあるというのはあるが,知らない遺跡や遺物が多く,なるほどと思うばかりである.
一番気になったのは,男性土偶である.
土偶は女性ばかりという常識があったので,本当に珍しいものを見ることができてよかった.

次回も「発掘された日本列島2016」の感想を取り上げたい.


by Allegro-nontroppo | 2016-08-07 21:38 | 講演会,シンポジウムなど
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