金銀の系譜―宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界―@静嘉堂文庫美術館

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リニューアルオープン展 第1弾 「金銀の系譜―宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界―」を鑑賞に静嘉堂文庫美術館に出かけた.

タイトル通り,静嘉堂文庫美術館はリニューアルのために長期間閉館していたそうである.

そういうわけで初めて,静嘉堂文庫を訪れることになった.

二子玉川駅からは道に迷わないようにバスを使ったのであるが,通勤でも体験しないほどの満員バスであった.

次回行くことがあれば交通手段についてもよく考えたい.

きちんと下調べしておけば,歩いていくこともできそうである.

以下,概要である.


草木摺絵新古今和歌巻 本阿弥光悦

金泥摺絵で草木を描いた絹本に新古今和歌集から15首書き散らしてあるそうである.

本阿弥光悦の書いた文字は残念ながら読めるほどの教養がないが,絹本に描かれた草木の高さに合わせて,文字の頭も高くなったり低くなったりしているように見えた.

絹本を作成したのは宗達だろうか?


勅撰和歌屏風 松花堂昭乗

松花堂昭乗は寛永の三筆の一人だそうである.

またしても文字を読むことができなかったのだが,煌びやかで眺めていたいような屏風であった.


四季草花図屏風 「伊年」印

「俵屋」らしい草花図であるが,あまり余白がないのは珍しいかもしれない.

これも琳派デザインといえるのであろう.

好みな作品である.


源氏物語関屋・澪標図屏風 俵屋宗達

国宝であるので今回の一番の見どころといえるだろう.

関屋図は源氏と空蝉が逢坂の関で出会う場面で,澪標図は華やかな源氏一行と身分の差を恥じて海上で引き返そうとする明石の君であり,どちらも29歳の源氏のある日の出来事とのことである.

この二つの絵は山と海,やがて出家する空蝉と皇太后宮の母となる明石の君など様々な対比があるそうである.

それぞれの源氏や空蝉,明石の君の姿は唯一,関屋図で源氏の袖のたもとが見えている程度で暗示するなども面白い.

モチーフの限定・簡略化,配色のこだわりや古絵巻からの引用など作品を鑑賞する力が問われる作品だが,私は完全に解説に頼ってしまった.

とにかく,宗達のたくさんのこだわりを感じられる屏風である.


色絵吉野山図茶壺 野々村仁清

野々村仁清といえば私でも知っている有名な陶工である.

桜の季節を表したものであった.

季節は違うものの,昨年の吉野山旅行を思い出しながら眺めた.

また,桜の季節にも訪れたいものである.


色絵法螺貝香炉 野々村仁清

本物の法螺貝かと見違うくらいの法螺貝である.

この香炉を使った人はどのような気持ちで眺めていたのであろうか.

野々村仁清作品は他にも出陳されていたが,尾形乾山つながりということであろうか.


住之江蒔絵硯箱 尾形光琳

光琳が私淑する本阿弥光悦作の硯箱を模して制作されたという.

少し前のテレビ番組「美の巨人たち」の琳派特集でクローズアップされていた硯箱の特徴と同じように思う.

その特徴とは,硯箱としては必要ないのに蓋が大きく膨らんでいる,鉛板が貼られている,文字が散らされているという点である.

波の絵というところも共通しているかもしれない.

琳派の伝統を受け継いだ硯箱ということになるのだろうか.


立葵図 尾形光琳

光琳の立葵図はどこかでもみた覚えがある.

好きなテーマだったのだろうと思う.

この作品は後で出てくる「光琳百図」に取り上げられている.


尾形流略印譜 酒井抱一編

宗達以降の琳派作品につけられた落款をまとめたものという.

琳派は私淑の関係で流派が続いているので,抱一の時点で一旦まとめられたのはその後の研究にとってプラスとなったのではないだろうか.

もっとも本人としては,単純に自分が正式な琳派の後継者であることを知らしめたかったという目的だったのだろうが.


光琳百図 酒井抱一編

光琳作品を抱一が捜索・調査・鑑定し作り上げられた光琳作品集である.

そのほかにも抱一は光琳の百年忌には法要を営むと同時に光琳の遺墨展覧会を開催している(これが日本における個人作家の展覧会のはじまりとなったそうだ).

抱一の光琳に対する愛を感じる.


波図屏風(付属:本多大夫宛 抱一書簡) 酒井抱一

この展覧会で一番衝撃を受けた出陳品である.

これまで,宗達や光琳は金,抱一は銀に例えられることがあるのは知っていたが,あまりピンときていななかった.

もちろん,銀の背景を持つ夏秋草図屏風は知っているが,それ以上に金や銀をメインに使わない好みの作品があったからだろうと思う.

ただ,この屏風を見た瞬間,納得せざるを得なかった.

金を背景にしたとしたら,こんなに素晴らしい屏風にはならなかったであろう.

書簡によると,抱一にとっても自慢の作らしい.

本当に強烈な作品であった.


麦穂菜花図 酒井抱一

パッと見ると,麦や菜の花が押し花にされて貼り付けられているように思うけれども,よくよく観察してみると,麦穂図は上下の麦で濃淡があり,遠近を感じられる.

波図屏風を見る前は抱一のこのような作品が好みだったのだが….


雨中桜花紅楓図 鈴木其一

やわらかな春雨にうたれる桜花と強い秋雨にうたれる楓である.

繊細で瑞々しい.

好みの作品である.


絵手鑑 酒井抱一

様々な画風,様々なテーマの抱一作品を72図も楽しむことができる.

伊藤若冲の図様を取り入れたりもしているようで,蛙の図なども若冲作品のように愛嬌があるように感じる.

他にも狩野派・土佐派・円山四条派・中国画など幅広く学んだそうで,私のような素人でもその片鱗をこの絵手鑑から感じることができる.


軽挙館句藻 酒井抱一

抱一の詠んだ発句を書きとめた自筆句稿とのことである.

抱一の感性や美意識をうかがい知ることができるそうだ.

ちょっとした絵なども描きこまれていた.


(天明新鐫五十人一首)吾妻曲狂歌文庫 石川雅望(宿屋飯盛)撰/北尾政演(山東京伝)画

抱一は俳諧や狂歌などにも才を発揮したそうで,この本にも尻焼猿人の名で冒頭に御簾越しの姿で描かれている.

当時も大名家の出身であることが広く知られていたのであろう.

光琳よりさらに手広く芸術に携わっていたように思うが,やはり実家の力で裕福に芸術活動できていたのであろう.


(江戸流行)料理通 栗山善四郎撰

料亭・八百善の四代目主人栗山善四郎による料理本であり,主人と交流のあった画家が挿絵を寄せているとのことである.

抱一は蛤の挿絵を描いている.

他にも谷文晁や葛飾北斎も描いているそうで,挿絵だけでもとんでもない料理本である.

この栗山善四郎という人はどうしてこんなに豪華な画家たちに挿絵を頼むことができたのだろうか.


曜変天目(「稲葉天目)」 建窯

油滴天目 建窯

茶碗のことはよく分からない.

解説文によれば油滴天目の中で内側の黒い釉薬の上の群れをなす斑点が瑠璃色あるいは虹色の光彩で取り巻いているものらしい.

今回展示の曜変天目は上記の特徴が同時展示の油滴天目と比較するとはっきりする.

曜変天目は世界に数個しかないとのことで,今回の出陳品も国宝である.

また,出陳品の油滴天目ですら重文とのことである.


以上が概要である.

今回が琳派YEAR最後の私の訪れた展覧会となった.

美術館の規模も大きい方ではないし,出陳品も多くはないが非常に見どころの多い楽しい展覧会であった.

静嘉堂文庫は三菱の岩崎弥太郎の弟やその息子のコレクションということで「恐るべし三菱」である.

なるだけ展覧会予定をチェックして面白そうな展覧会があればまた訪れたい.

ところで来年はサントリー美術館で鈴木其一の展覧会が行われるらしく,「朝顔図」がやってくるらしい.

何があっても見に行きたい.


ちなみに静嘉堂文庫の庭園では12月中旬になろうというのにまだまだ紅葉が楽しめたので写真を貼っておく.

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今回のブログ記事が本年の更新ラストとなります.

今年も大変お世話になりました.

特に何回もコメント下さいました,ひろみ様には本当にブログの思ってもみない楽しさを教えて頂きました.

本当にありがとうございました.

皆さまがよいお年をお迎えになられることをお祈りしております.


来年はトーハクの特別展「始皇帝と大兵馬俑」とサントリー美術館の「水―神秘のかたち」の鑑賞から更新したいと思います.


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by Allegro-nontroppo | 2015-12-29 10:00 | 博物館
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