特別展「キトラ古墳壁画」記念講演会@東京国立博物館

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写真は特別展「キトラ古墳壁画」の展覧会カタログ(図録)である.
普段,博物館に行っても,あまり図録は購入しないのだが,この図録は購入してしまった.
見本を立ち読みさせて頂いたところ,コラムが充実しているようだったし,何より,副葬品の情報まで載っているのが素晴らしい.
キトラ古墳と高松塚古墳は壁画に注目が集まるせいか,あまり副葬品についての資料が見つからないのである.
壁画などのグラビアも美しいし,これからじっくり読んでいきたい.

さて,特別展「キトラ古墳壁画」記念講演会(2) 「キトラ古墳壁画に迫るー高松塚古墳壁画との比較からー」に参加したのである.
特別展「キトラ古墳壁画」鑑賞に関する当ブログ記事はこちら
この講演会に参加するためには事前に応募が必要で,その時にはGWの混雑ぶりなど全く想像せずに応募してしまった.
よって,5月3日という,とんでもない日に東京国立博物館に向かうことになってしまったのである.

講師は有賀祥隆氏.
高松塚古墳の発見時には,文化庁の調査員として調査に携わった方だそうである.

講演内容としてはキトラ古墳壁画と高松塚古墳壁画の写真を用いた比較が中心であった.
この比較については様々な文献で取り上げられているので,今回は大まかに書いておくと次のようになる.
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上記以外でおもしろいと思った解説を下記に記す.

・天文に関して
キトラでは四神を四方の壁の上部に描いているように天体の一部という意識があるが,高松塚では東壁に太陽,西壁に月を描いたり,天文図についても象徴となる28宿のみしか描かれていないなど,天文に関する意識が希薄になっている.

また,キトラでは太陽と月の下に雲気文が描かれているが,高松塚では山岳文に変化している.
これは山岳文は法隆寺の塑像にもみられるので,高松塚と法隆寺の建造は時期が近いと考えられる.

ちなみに天井はキトラは屋根型の切り込みありで,高松塚は平置きである.

・キトラの四神と十二支に関して
四神は全て右を向いているが十二支は全て左を向いて描かれている.
正倉院宝物の十二支八卦背面鏡の青龍と白虎と似た表現(特に足と尾の絡まり)だが,朱雀は少し違う.
あえて言うなら,法隆寺玉虫厨子の背面の絵に似ている.
古い形の朱雀をモデルにしている?

十二支の服は描かれた方位の五行に合わせた色で描かれている.
中国ではブロンズで造られた十二支で埋葬者を守る風習があった.

四神,十二支でランクの違う絵描きが書いているようである.

・高松塚の群像に関して
東壁男子群像は視線を遮る人をいれるという中国の進んだ表現法が取り入れられている.

西壁女子群像,通称飛鳥美人は頭の高さがそろっていないことや服にしわを入れるなど画期的な表現方法が取り入れられている.

東壁は当時の一流の職人が描き,西壁は若い意欲的な職人が描いた可能性がある.

・制作年代に関して
中国の壁画をよく学んで描いている.
高松塚の人物像の服装から,衣服令の時期とあわせて考えると時期が絞れる.
710年くらい?
キトラの方が高松塚よりも少し古い.

・キトラの所在地に関して
キトラ古墳は阿部山にある.
阿部御主人は大臣までんった人物で707年に死亡している.
何か関連はあるか.


有賀氏ご本人がおっしゃっていたように,当たり障りのない,非常に言葉じりに気を付けた講演会であった.
キトラと高松塚古墳に関しては推論を出すことすらタブー視されているのだろうか.
正直なところ,とてもタイトル通りにキトラ古墳壁画に迫れたとは思えない.
これは有賀氏個人の問題ではなく,キトラ・高松塚古墳に漂う「決して仮説,推論を述べてはいけない」という雰囲気のせいであると考える.
この件については,いずれ当ブログで記事を書きたいと思う.

以上が,特別展「キトラ古墳壁画」記念講演会(2) 「キトラ古墳壁画に迫るー高松塚古墳壁画との比較からー」参加記録と感想である.

おまけ
東京国立博物館では表慶館で「飛鳥ーキトラ2016ー」も開催中である.
一番の見どころはキトラ古墳壁画と高松塚古墳壁画をタブレット端末で自由に拡大縮小できる映像展示であろう.
ここはすごい人だかりであった.
どうやら,人の多さにキトラ古墳壁画観覧を断念した人も集まってきているらしい.
残念ながら,私は体験できなかったが,他にも当時の飛鳥京のイメージをCGで再現し,タブレット端末で体験できるコーナーがあり,こちらは楽しませてもらった.
他にも里中満智子氏の「持統天皇物語 天上の虹」のマンガ原稿や藤原京のジオラマなど見学できる面白い企画であった.


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by Allegro-nontroppo | 2014-05-07 19:18 | 講演会,シンポジウムなど
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