アマテラス及び神宮考⑧ -伊勢と神宮に関わる古代地方豪族-

神宮は天皇家のための御社といえるだろうが、天皇家のみで運営されてきたわけではないし、周辺豪族の影響も計り知れないであろう。
 もともと、アマテラス及び神宮考を書くにあたって、地方豪族については出てくるたびに挟み込めばよいと思っていたが、どうも一つの記事にまとめた方がよさそうなので、今回はいくつかの豪族についてまとめたいと思う。

 豪族たちを見ていく前に前提として、古代の豪族たちは自分たちの氏神がいかに天皇家に貢献したかを示すことによって、自らの正当性を示した。
そういうわけで、記紀や風土記に出てくる天津神の子孫は豪族たちにつながっていく。 よって、そのような観点も含めてこの記事を書いてみる。




まず、なんといっても最もかかわりが深いのは皇大神宮禰宜荒木田氏及び豊受大神宮度会氏であろう。
 荒木田氏は系図上では中臣氏から発生した一族であり、成務天皇のとき荒木田姓を下賜されたという。
しかし、大貫で新たに開墾した土地を荒木田氏が賜ったという伝承があり、「新墾田(あらきだ)」から荒木田となったと考えられるため真偽のほどはよく分からない。

 一方、度会氏は先の記事(アマテラス及び神宮考⑥ -伊勢地方の信仰-)に詳しく書いたアメノヒワケの子孫である。
アメノヒワケについては伊勢国風土記にのみ記載がることから、天津神に属しているが、これはヤマト勢力の侵攻により後から結び付けたもので、そもそもは伊勢の土着神であったのではないかと考える方が自然であろう。
度会氏という氏族名も明らかに地名の度会からとったと考えられる。
 また、「海部氏本紀」の「海部氏勘注系図」の系譜によれば、外宮を祀った度会氏の系譜として、天火明命-天香語山-天村雲命-天忍人命-天戸目命-建斗米命-建田背命-淡夜別命(海部祖)-度会 とある。
アメノヒワケはアメムラクモの孫という説もあることから、この「海部氏本紀」は真実味がある。
度会氏の祖の海部氏が丹後と伊勢とを行き来した結果、この神が伊勢に祀られたという伝承についても考慮しておく必要があるだろう。

 次に籠神社の社家・海部氏を確認しておこう。
度会氏の祀る豊受大神宮祭神トヨウケビメは雄略天皇治世時にアマテラスの食事の奉仕のために呼び寄せられた女神であるが、元々、どこからやってきたのかというと、丹後国一宮籠神社からである。
この籠神社の社家を担っているのが海部氏である。
海部氏は海人族を統括した伴造氏族である。
この海部氏は現存では日本最古の系図「海部氏系図」(国宝、平安時代の書写)によって、アメノホアカリを始祖とする一族の系譜を確認することができる。
アメノホアカリは別名の「天照国照」やそのままの本名である「火明」からわかるように太陽の光や熱を神格化した神である。
『古事記伝』では「穂赤熟(ほあかり)」で、稲穂が熟して赤らむ意味で稲に関係のある名前であり、太陽神、農業神として信仰されている。 
問題はアメノホアカリの別名として先代旧事本紀にはニギハヤヒが挙げられていることだろう。
ニギハヤヒはスサノオやオオクニヌシの息子という説があるほど明らかに出雲臣の神である。
また、古事記では、神武天皇の神武東征において大和地方の豪族であるナガスネヒコが奉じる神として登場することなどから(ナガスネヒコは神武天皇に討伐されてしまう)、天津神では決してない。
 というわけで、海部氏含む海人族は天津神たち中央勢力と異なる一族(おそらく出雲族)と言えそうだが、この籠神社からトヨウケビメが遷座したのは少し奇妙に感じる。
記紀では、ヤマト勢力は出雲臣から神宝を奪ったり、出雲臣の筆頭争いに手を出したりと、出雲臣からみれば仲がいいとはとても言えない。
それなのにその出雲族から神を連れてくるなど平穏に治まるはずがないように思えてしまうのだ。

 この海部氏とも非常に関わりが深いのが尾張国造尾張氏である。
尾張氏は海人族で天火明命の曾孫、天忍人命から出た一族である。
この神については既に述べたため、ここには記載しない。
尾張氏は平安時代に藤原氏に代わられるまで熱田神宮大宮司職を務めた。
また、壬申の乱において功績を挙げたことから、天武天皇や持統天皇より位階や功田を賜ったようである。

 最後に、猿田彦神社宮司宇治土公家について確認しておきたい。
宇治土公家の氏神であるサルタヒコについては、前回の記事(アマテラス及び神宮考⑥ -伊勢地方の信仰-)に記したから、サルタヒコの子孫で宇治土公家の先祖の大田命について記しておく。
 大田命は倭姫命巡幸の際、大田命が祖神、猿田彦大神と同様に先導し、五十鈴川の川上一帯の霊地を献上、神宮の創建に尽くしたと倭姫命世紀にある。
この記述から、サルタヒコの岐神的性格は子孫に受け継がれるほど強力なものであっといえる。
また、土地の献上という国津神らしい性格も持ち合わせているといえるであろう。




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by Allegro-nontroppo | 2013-11-22 19:44 | アマテラスと伊勢
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