東京国立博物館 特別展 京都 洛中洛外図と障壁画の美を鑑賞に出かけた。 東京国立博物館に出かけるのは夏以来である。 この時は常設展を見たことがないことに気づき、出かけたのであった。 特別展でいうなら、ゴールデンウィークを過ぎたころに「大神社展」に行った以来だ。 思った以上に面白い展示が並んでいたのだが、時期を逃してしまい、国宝「七支刀」(古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵)を見ることができなかった。 その反省を生かし、この特別展の巨大広告を見かけたときには、展示時期をきちんと確認しようと思っていた。 ところが、展示開始ごろに伊勢旅行に出かけて、そちらにかまけて、すっかり確認を怠っていた。 やっと落ち着いた先週に確認したところ、もっとも見たかった展示物が11月4日で終了してしまうことが分かった。 そんなわけで3連休中日というもっとも真の悪い日に出かけることとなった。 上野駅改札内では、上野公園内の博物館、美術館で開催されている特別展のチケットを購入することができるが、すでにそこに列ができていた。 どうやら、東京国立科学博物館では「恐竜展」、国立西洋美術館では「ミケランジェロ展」が開催されているようである。 また、東京国立博物館では別に「上海博物館展」も開催されている。 チケットを買い、上野公園に入ると入口付近はイモ洗い状態である。 動物園に行く人あり、上野公園内で開催されているイベントに参加する人あり、楽しそうな様子が伝わってくる。 東京国立博物館内に入り、平成館に向かうと入場列が見えた。 特別展の前期終了間近ということと三連休ということで多いのだろう。 と言っても入場までの待ち時間は10分程とのことでそう待たされた感はなかった。 会場に入って、まず出迎えるのは展示室一面の巨大スクリーンに写された「洛中洛外図屏風 舟木本」である。 どの屏風に関わらず、あれだけの巨大スクリーン(映画館レベルではないだろうか)で見ることはまずない。 画像もかなり美しかった。 編集も素晴らしく、屏風に描かれた人々がアニメーションのように楽しく動いているようだった。 この後に控える本物の屏風への期待が高まる。 次の展示室に移るとその「洛中洛外図屏風 舟木本」(江戸時代 岩佐又兵衛筆)が展示されている。 この「舟木本」は他の展示中の洛中洛外図屏風にくらべて、非常ににぎやかである。 おそらく、描かれた人の数ではこの中でNo.1であろう。 大仏を眺めたり、五条大橋を踊りながら渡ったり、商いをしている人あり、武士集団が駆け抜けたりとそこここに人がいる。 また人々の表情も豊かで、まるで屏風の中の喧騒が聞こえてきそうである. 次は「洛中洛外図屏風 上杉本」(室町時代 狩野永徳筆)、本日お目当ての展示物である。 私はこれが前々から見てみたかった。 もしかしたら、小学生からの悲願であったかもしれない(笑) というのも、大河ドラマだったか、新春ワイド時代劇であったかは忘れてしまったが、織田信長が上杉謙信にこの屏風を贈るシーンを見たからである。 もしかしたら二、三度見ているかもしれない。 その際の上杉謙信を誰がやっていたのか、全く覚えてはいないが、謙信がものすごく褒め称えていたのを覚えている。 そんなに素晴らしいものならば一度見てみたいとは思ったのだが、本品は山形・米沢市上杉博物館に所蔵されており、おいそれとは見に行けない。 そこで今回、人が多いだろうことは承知の上で出かけたのだった。 まず、説明部分を読んで、私の記憶している部分が間違っていないことを確認して安心した。 また、狩野永徳筆ということに驚いたが、時代と贈った人、受け取った人を考えれば当然であろう。 肝心の作品はといえば、舟木本と比べてふんだん金箔が使われていることが分かる。 そして、一つ一つの建物や人々などの出来はもちろんながら、狩野派らしい鴨川のブルー、山々のグリーン、屋根そして金雲のバランスが素晴らしい。 よく、今までこの色が残っているものだと感心してしまった。 私はあまり狩野派に詳しくないが、山々の描き方はやはり狩野派の特徴がよく出ているように見えた。 上杉謙信が賞賛する気持ちがよく分かった?(現実はどうだったか分からない(笑))逸品であった。 他に洛中洛外図屏風としては「歴博乙本」(室町時代)と「勝興寺本」(江戸時代)があったが、前の二つが素晴らしすぎて記憶が薄れてしまった。 歴博乙本については、今年歴博に出かけたのだが見た記憶がない。 朝から出かけたにもかかわらず、第一展示室と第二展示室の途中までで、閉館まで一時間半しかなくなり、あわてて他を流して鑑賞したため、よく覚えていないらしい。 また、是非、訪れたい。 勝興寺本については二条城に天守閣が描かれていて驚いた。 古くには天守閣があったとは知らなかった。 次は第二部の障壁画である。 まずは京都御所の障壁画、「賢聖障子絵」(江戸時代 狩野孝信筆)、「群仙図襖」(安土桃山時代 狩野永徳筆)、「唐人物図屏風」(江戸時代 狩野孝信筆)、「唐人物図屏風」(江戸時代 甚丞筆)である。 賢聖障子絵については何人もの中国歴史上の偉人が描かれていたのだが、残念ながらはっきりと分かるのは諸葛亮くらいである。 ただ、それぞれの表情によりなんとなく性格の違いが分かるところが素晴らしい。 群仙図襖についてはおそらくこの世ではない、仙人の世界のどこかであろう。 仙人のどこか時の流れのちがう仙人の世界の雰囲気が滲みでてきているようだ。 唐人物図屏風はどちらもそれぞれ何かしら故事などを描いてるのかもしれないが、残念ながらよく分からない。 それぞれ表情の描き方に特徴があるようだ。 ここから第二会場に移るが、まずはここでも巨大スクリーンが現れる。 龍安寺 石庭の四季の移り変わりを定点カメラで写したものである。 どの季節も美しいが、やはり秋が美しい。 石庭のバックの木々が徐々に色づく変化が楽しい。 おそらく同じような光景が実際の龍安寺でも見られるだろう。 さて、その石庭に面した部屋にあったという障壁画である。 明治時代の廃仏毀釈の煽りを受けて流出してしまった障壁画であるが、いくつかはオークションで買い戻され、いくつかはメトロポリタン、シアトル美術館に所蔵されているという状況らしい。 そのアメリカ分も今回は展示されている。 「群仙図襖」、「列子図襖」、「琴棋書画図襖(絵を見ている場面)、(囲碁の場面)、(琴をもっている場面)」でいずれも江戸時代である。 群仙図襖は仙人らしき男性と童子が歩いている。 列子図襖は飛んでいる仙人を何人かの人が楽しそうに見上げている。 琴棋書画図襖はそれぞれ、仙人たちの一場面を抜き出したような襖である。 お寺の襖に仙人の絵が描かれているのは何か不思議な気がする。 最後に二条城二の丸御殿を飾った障壁画である。 この展示室の素晴らしいところは、実際のそれぞれの間と同じように長押の上下まで、展示されており、まるで、それぞれの間にいるようなところである。 「松桜柴垣禽鳥図」、「楼閣山水図」、「桜花雉子図」、「楼閣山水図」(江戸時代 狩野尚信筆)は黒書院一の間、二の間の障壁画であるが、この二つの間はつながっていることから、すべてをひっくるめて、統一感があることが分かる。 それぞれ、上や横の障壁画に枝が伸びたりまたは、近景と遠景を表したりとさまざまな表現に使用しており、眺めて飽きない。 それを最も実感させてくれたのは、「松鷹図」(江戸時代 狩野探幽筆)である。 松鷹図のうち襖四面は昨年の「江戸東京博物館 特別展 二条城展」にて展示されていた。 その際も動きのない鷹であるのにまるで睨み付けられているような存在感を感じさせてくれたのだったが、今回は、壁一面が展示されているとあって、松のダイナミックさも加わり、想像以上の迫力であった。 総括として、図屏風と障壁画の展覧会であったため展示数はかなり少なかったが、一品一品が巨大であるため十分満足であった。 また、巨大スクリーンを使用したり、二条城の間(黒書院の間に関しては二間続き)を再現したりというのは初めての体験であったため驚くと同時に、楽しめた。 またの機会があれば体験してみたい。 最後に、やはり「洛中洛外図屏風 上杉本」を見れたのはよかった。 今回の購入品はもっと、洛中洛外図屏風を眺めたいと思い、珍しく図録を、加えて、いくつか絵葉書も購入した。 上野からの帰りの電車ではとなりに座ったご老人が図録に目を止め、展覧会の様子を尋ねられたので、簡単にお答えした。 ご老人が先に電車を降りる際にどうやらご老人の奥様らしき女性と京都展についてお話しされていた。 今後、鑑賞される予定でもあるのだろうか。 だとすれば、楽しまれるといいなと思う。 ところで、東京国立博物館では今後開催される特別展のチラシを頂いてきた。 「特別展 栄西と建仁寺」で来年の春に開催されるらしい。 私が中世から近世の絵師で最も好んでいるのは尾形光琳である。 ということで、絵師一派の中では琳派が最も好きだ。 建仁寺と言えば、琳派の祖、俵屋宗達の「風神雷神図」を所蔵していることでも有名だが、聞くところによると、普段、建仁寺に行っても鑑賞することはできないらしい。 頂いたチラシには展示品リストは記載されていないが、でかでかと風神雷神図がプリントされているからには、東京に来るのだろう。 来なければ詐欺である。 ということで、早くも来年の春が楽しみである。 鬼に笑われてしまうだろうか。
by Allegro-nontroppo
| 2013-11-05 00:26
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