コレクション展 はじめての古美術鑑賞―絵画の技法と表現―@根津美術館

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根津美術館にコレクション展 はじめての古美術鑑賞―絵画の技法と表現―を鑑賞しに出かけた.

お盆の時期に開館している美術館は貴重なのでありがたい.

以下感想である.


たらしこみ

墨や絵の具が乾ききらないうちに,より多く水を含んだ墨や絵の具を加えて複雑な滲みをつくりだすのだそうだ.

私の大好きな琳派の特徴となる技術の一つである.

伝俵屋宗達筆の老子図では牛の毛に光が反射して見えるよう「たらしこみ」が使われている.

一方,伝立林何帠筆の木蓮棕櫚芭蕉図屏風や伝喜多川相説筆の四季草花図屏風では木肌を表現したり,同じ葉の繰り返しに複雑さや奥行を加えたりしており,日本絵画には遠近法がなかったというような話も聞いたことがあるが,他の方法で奥行を与えていると知り面白い.


潑墨

筆に墨をたっぷりと含ませ,それをはねちらかすように大胆な筆さばきで一気に形状を表現する技法ということである.

雲渓永怡筆 沢庵宗彭賛,周徳筆,周珍筆のそれぞれの潑墨山水図と狩野常信筆の瀟湘八景図巻を鑑賞することができた.

遠近を表現するために水を多く含んだ墨で遠くの山や崖を,濃墨で木や舟を描いている.

表現技法から考えるととにかく一筆で描くことが肝要で,最初にかなり計算されていなければ描けないのだと思う.

たらしこみは紙の表面に生じるムラで潑墨は紙の繊維にしみ込んだにじみの効果を利用しているのだそうで,紙の上でどのようなことが起こっているのか解説されているのもありがたい.


ぐま

雪や光など白いもの,明るいものを描くときに外側を墨や暗色のぼかしでくま取り形が浮き上がるように表す方法ということである.

赤脚子筆の白衣観音図,仲安真康筆の富嶽図,そして楊柳白鷺図で使われている.

白衣観音図の光背や雲,富嶽図の雪山などは他の絵でも見かけたことがあるが楊柳白鷺図の白鷺はなかなかインパクトがある.


つけ立て

輪郭線を用いず,筆の穂の側面を利用してひと筆で対象を描き,陰影や立体感を表す方法ということである.

長沢蘆雪筆の竹狗児図と松村景文筆の花卉図襖ではそれぞれ竹と花卉につけ立ての技術が使用されている.

筆の紙に対する角度だけでなく,筆のどこにどのくらいの量の墨や絵の具をつけるかを計算しなければならないとなるとこちらも計算が必要な技術であろう.

竹狗児図の子犬が可愛らしかった.


金雲

箔を貼って雲や霞をかたどったもので,場面の区切りや省略のために用いるが装飾的な効果も高いということである.

洛中洛外図屏風のような絵を見ていつも感心してしまうのだが,雲があることで高みから見下ろすように感じられることと雲による画面の切り替えができるということが両立しており,しかも不自然でないことが素晴らしいと思う.狩野探幽筆の両帝図屏風でも素晴らしい皇帝を盛り立てるように金雲が使われているようで,そのようなパターンもあるのかと面白い.


白描

墨の線のみで描いた絵で水墨画にみられるような滲みやぼかしなどは用いない.密教図像,あるいは絵巻などにも用いられたという.

経典や口伝に説かれる諸尊の像形式や曼荼羅の図様を伝えるために密教では白描がもっぱら使われたということである.

仏像画などでよく見かけるが書きかけなのだろうかという,しょうもない疑問が解けた.

毘沙門天図像と大元帥明王・四天王図像をそのような視点で見てみると,確かに分かりやすいように思う.

ただし,金光明経巻第四断簡(目無経)は後白河法皇崩御により中止になった物語絵巻の下絵を料紙として用いているそうで,白描の理由もいろいろのようである.

鳥獣戯画断簡(模本)も鑑賞することができたのが,高山寺の僧が描いたという説が本当ならば,密教の図像にも詳しい僧なのかもしれない.


截金

金箔や銀箔を細い線や三角・四角・菱形などに切って絵画や彫刻に貼り付ける技法で仏の着衣や背景の文様,光線などの表現に用いられるということである.

阿弥陀三尊来迎図,善導大師像,愛染曼荼羅,大威徳明王像,そして不動明王立像に截金の技術が用いられているようである.

善導大師像では善導大師には下半身が光り輝いたという伝説があるらしく,下半身に截金が用いられている.

また,阿弥陀三尊来迎図では背景光背や光芒に光り輝く截金を使い,阿弥陀三尊の体には光が穏やかな金泥を使い,光の加減を調整されているのが面白い.

また,仏像の着衣にも使用されているそうである.


裏箔

絵絹の裏側から金箔や銀箔を貼り付け,絹目を通すことで,金銀の強い輝きを抑える方法ということである.

興福寺南円堂曼荼羅では肉身を金泥で塗り,着衣や宝冠などは裏箔で光り輝かせ表から墨線でかたどっているということである.

藤原鎌足像は多武峰曼荼羅ということでこちらも背面全体に裏箔がつかわれているようである.

裏箔については一体,絵の裏側がどうなっているのか気になって仕方ない.


繧繝彩色

色の濃淡をぼかしの方法でなく,明るい色から次第に同系の暗い色を帯状に並べることによって表現する技法ということである.

愛染明王像,壬生寺地蔵菩薩像,そして求聞持虚空蔵菩薩・明星天子像が展示されていた.

どれも連弁に繧繝彩色が用いられている.

実物を見ても帯状になっている様子はよく見えなかったがチラシを見るとその様子がよくわかる.

次に見る機会があれば詳しく見てみたい.


以上.

いろいろな日本画の技術を学ぶことができて,今後の美術館ライフが充実しそうで嬉しい.

ただ,裏箔は初見で技術を見分ける自信はないというのが感想である.


補足

根津美術館の庭園には4つの茶室があるが,この茶室は月1回,一棟ずつ一般公開されているそうなのだが,たまたま,その日にあたったので,弘仁亭・無事庵を拝観してきた.

思ったよりも広くて,またやかんなどもたくさん並んでおり,驚いた.

とはいえ,茶室から眺める庭園は美しく,春や秋になればさらに季節を楽しみながら茶をたしなむことができるのだろうと思った.

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# by Allegro-nontroppo | 2016-08-28 22:45 | 博物館