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第28年度第2回企画展 ようこそ地獄,楽しい地獄@国立公文書館

国立公文書館に出かけた.

28年度第2回企画展 ようこそ地獄,楽しい地獄を見に行くためである.

終戦の日にふさわしい展示を見てきたので,他より先にこちらの記事を記したい.


Ⅰ.地獄行きの罪

宇治拾遺物語(成立:鎌倉時代前期)

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歌人の藤原敏行が地獄に堕ちたという話があるという.

魚を食べるなどの不浄の身で法華経を書写したという罪で地獄に堕ちたのだが,金光明経を書写することを誓い,現世に戻ったが,色好みであったことや,日々を無為に過ごしたために再び地獄に堕ちてしまったということである.

ここに書かれているような生活は当時の貴族たちは当たり前の生活だったように思うが、あえて藤原敏行が地獄に堕ちたとされたのか,他に理由があるように勘ぐってしまう.


続古事談(成立:1219年頃か)

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孝謙天皇が西大寺の建立を命じた際,藤原永手が五層の塔を三層に縮めてしまい,その罪によって熱く焼けた銅の柱を抱かされる報いを受けたと書かれているという.

藤原永手に関して,あまり内容がいいといえない話を書くことができる時代であったのだろう.


宝物集(成立:1179年頃か)

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宝物集では醍醐天皇までもが地獄に堕ちたとされているということである.

罪は父の醍醐天皇のいいつけに背き,菅原道真を無実の罪で左遷したためということである.

それならば藤原時平はどうなのだろうと思わずにはいられない.

藤原氏に対して,そのようなことが書けない時代となってしまったのだろうか.

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また,紫式部についても虚言を用いて源氏物語を執筆した罪のために地獄に堕ちたとされているらしい.

紫式部の地獄行き話の大本はこの本なのだろうか.


源氏供養表白

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中世には紫式部や源氏物語の読者を供養する文化が生まれた.

そこで使用された表白文では巻名が順を追って登場するのだが,これは表白文に合わせて源氏物語を火にくべたためらしい.


Ⅱ.地獄は何処に

小袖曽我(成立未詳)

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悪行を繰り返す兄弟とその罪を償おうとする母親の話が引用されているということである.

場面は地獄に堕ちようとする兄弟の髪を引っ張って救おうとする母親の姿である.


Ⅲ.地獄の責め苦

三教指帰(成立:797年)

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三教指帰には地獄の恐ろしい様子が記されているということで,仏教または密教の布教にもこのような罰の様子が必要だったのかと空海の苦労を考えてしまう.


本朝文粋(成立:9891066年)

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本朝文粋によれば,源融も地獄に堕ちてしまったようである.

現世で殺生を行ったためというが,死を厭う貴族が本当に殺生などするだろうか.

源融といえば平安時代の憧れの貴族の一人という認識であったので不思議に思ってしまう.


金葉和歌集(成立:11261127年)

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和泉式部が地獄絵を見て詠んだ歌がとられている.

詠んだ内容は現代人にも通じるところがあって面白い.


Ⅳ.冥官と極卒

江談抄(成立:11041108年)

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小野篁が閻魔王に仕える冥官であったという逸話とともに,大江匡房が小野篁と似た星回りだったために冥官であると勘違いされたという逸話もあるということである.

当時は星回りも重要視されていたのだろう.

今昔物語集(成立:1120年以降)

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小野篁が藤原良相を地獄の冥官として助けたという有名な逸話が記載されている.

藤原良相といえば藤原良房の弟ということと,この小野篁との逸話くらいしかよく知らないが,

あの時代の藤原北家の人間ということで,いろいろ調べてみたい人物でもある.


古今和歌集

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平家物語(成立:鎌倉時代)

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平家物語では平時子が平清盛を迎えに来る地獄の極卒たちの夢を見た後,清盛が亡くなってしまうという逸話があり,これは清盛が東大寺を焼き討ちし,大仏殿を焼亡させた報いという.

先の藤原敏行などと比べると仕方ないなあという感想を持ってしまう.

未来記(成立:未詳)

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牛若丸と出会った鞍馬天狗が,平清盛が南都焼討の報いによって熱病に苦しむ未来を演じて見せたという場面ということである.


Ⅵ.六道輪廻―三悪道の世界

源平盛衰記(成立:未詳)

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平家一門滅亡後の建礼門院が後白河院と六道輪廻の苦しみを語るという場面である.

平家一門の没落,一門の人々や我が子との別れ,都落ちから源氏との戦いが続くという人生が六道輪廻に例えられているという.

しかし,後白河院は平家一門と親しいイメージはないのだが,実際は違ったのだろうか.


難福図(成立:1768年)

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この世の地獄と極楽を描くよう円山応挙に依頼したという.

今回の展示は明治時代に原本を模して出版されたものということである.

円山応挙は植物を描いているイメージが強かったので意外な作品に思えた.

福岡県下水害之図

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18897月に筑後川が氾濫し,多数の犠牲者が出た水害の図ということである.

私は福岡出身だが,筑後川の氾濫に関しては毎年,道徳などの授業で取り上げられていたという記憶がある.

まさに地獄であっただろう.


さいごにーたのしい地獄

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可愛らしい閻魔大王たちが描かれていた.

暁斎画談

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人間が賢くなって極楽に行ってしまうため,地獄はいつも不景気であったということであった.

そのため,閻魔大王ほか地獄の王や役人たちは極楽で就職活動をし,鬼たちは角を切り取って売ろうとしているという.

日本で漫画文化が盛んになった理由がよくわかる.


視聴草

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盗みを働いた罪人を曳くための鉄の臼は贅沢なので石を臼がわりにつかうように,剣山地獄は剣でなく竹で間に合わせるようにというようなことが書かれており,コミカルで面白い.


さて,「ようこそ地獄,たのしい地獄」が開催中であったが,終戦の詔書原本が同時展示されていた.

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修正跡がはっきり残っているのに驚いた.

清書する時間もないとはどのような状況であったのだろうか.

いろいろ考えさせられる.


国立公文書館は初めてであったが,なかなか楽しめた.

これで無料とはお得である.

次の企画展も確認してまた訪れたいと思う.


by Allegro-nontroppo | 2016-08-15 00:17 | 博物館
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