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物語をえがく -王朝文学からお伽草子までー@根津美術館

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コレクション展 物語をえがく -王朝文学からお伽草子までーを鑑賞に根津美術館まで出かけた.

今回は特別展というわけではないので,人出もそう多くないかと思っていたが平日にも関わらず,多くの人が来館していた.

さすが根津美術館である.

以下,概要である.


伊勢物語図屏風・源氏物語図屏風

八曲一双,白描で左右に伊勢物語の有名な場面と源氏物語の各帖からそれぞれを描いている.

左右の画風が異なっているので気づかなかったが,当初から一双として作成されたものとのことである.

この一双が並んでいたら物語を読むように世界に浸れそうである.


源氏物語朝顔図

雪上で遊ぶ童女たちを眺める光源氏と紫の上を描いた土佐光起の作品である.

この場面が描かれるのは珍しいように思えたので面白く感じた.


源氏物語図(若菜上・下)

住吉具慶の作品.

今回展示されていた物語絵の中でいちばんきらきらと源氏物語のイメージに近い屏風のように感じた.

若菜下の住吉詣ででは先月訪れた住吉大社の太鼓橋もしっかり描かれていた.


曾我物語図屏風

曾我兄弟が途中失敗をしながらも,無事仇をうち,処刑されるまでの物語が描かれる.

もう少し知識があると,描かれた人物の特定ができて楽しいだろうが,おおまかな内容しか知らないので残念である.


平家物語画帖

扇面に絵を描き,帳面左側に貼り付け,右側に詞書を記している.

特に扇に矢を射る場面のある,那須与一の場面を見ることができてよかった.


蛙草紙絵巻

解説によれば,不思議な機縁で物を嗅ぎ当てる名人になりすまし,栄耀を得るという特異な題材とのことである.

アラジンと魔法のランプにも似たような題材だったように覚えている.

蛙草子のことは知らなかったのだが,このような絵巻物を見ると,話の概要をつかむことができたので非常に助かる.

当時の人々も同じように眺めていたのだろうか.


玉藻前物語絵巻

玉藻前のような力のある女の狐については,古代中国の妲己や安倍晴明の母親・葛葉,荼枳尼天,稲荷神など興味のある神々や人物の正体であったりする.

詞書を読むことができないので,絵だけ楽しんだが,上巻と下巻で場面が全く異なっていて玉藻前の物語を知らないと一連の絵巻と分からなくなってしまうかもしれない.


賢覚草紙絵巻

賢覚草紙は安珍と清姫の道成寺伝説の変形判ということである.

女が化けた蛇も含めてどこかユーモラスに描かれており,恐ろしさよりも親しみを感じる絵柄である.


酒呑童子絵巻

酒呑童子とはその名を名乗った盗賊,つまり人間であったと考えている.

それはともかく,この絵巻の面白いところは酒呑童子の屋敷周辺の庭に四季折々の植物や雪などの自然が描かれているところである.

現世とは異なる別の世界に屋敷が存在していることを表しているのだそうである.

狩野派の手による絵巻のようで力のある印象的な絵巻であった.


扇面歌意画巻

この画巻はコレクション展外(コレクション展は第1, 2室で実施されていた)の第5室を使って展示されていた.

伊勢物語の「かきつばた」の歌は扇面ではっきりとわかった.

西行の「はなのもとにて春しなん そのきさらぎのもち月のころ」は考えてみて分かったという程度である.

他は図録を眺めて分かったものもあったという程度で,そもそも歌を知らないというものもあった。

勅撰和歌集や私家集,謡曲,お伽草紙,狂言など広くから収載されているそうで全部で100首あるそうだが,それにしても,あまりに知らない歌が多かったので来年は歌の勉強もしていかねばと思う.


以上が,今回の根津美術館・展示物の感想である.


ところで,根津美術館に出かけたのは11月末のことであったが,庭園の木々が色づき始めていたので散策してみた.

人が多かったのは紅葉のせいもあったのかもしれない.

普段,開放していない庭園部分も開放されており,手軽に紅葉を楽しめた.

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来年もどこかで,根津美術館を訪れたい.


by Allegro-nontroppo | 2015-12-19 20:46 | 博物館
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