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特別展 琳派400年記念 琳派と秋の彩り@山種美術館

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「特別展 琳派400年記念 琳派と秋の彩り」を鑑賞しに山種美術館に出かけた.

山種美術館を訪れるのは初めてである.

山種美術館は近代以降の日本画中心の展示が多いので,機会がなかったがやっと訪れる機会がやってきたのである.

以下,印象に残った作品の概要である.

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第1章 琳派の四季

鹿下絵新古今和歌巻断簡 俵屋宗達()・本阿弥光悦()

元々は巻物だったものを断簡としたもので,展示部分は巻頭にあたるとのことである.

下絵の鹿が金銀泥で描かれており,可愛らしいしぐさながらも神性を感じさせられる.

全ての部分を見てみたいものである.


槙楓図 伝 俵屋宗達

曲がりくねった幹をもつ槙と楓が描かれている金屏風である.

向かって左側六分の一にはほとんどなにも描かれない空白がある.

この構図はのちの燕子花図や紅白梅図屏風等を連想させる思い切ったデザインのように感じられる.


芦鷺図 伝 俵屋宗達

伊年印があるので,俵屋宗達の工房で作成されたことには間違いないのだろう.

芦の茂みに立つ鷺はユーモラスな表情をしている.

芦や鷺の立つ水辺はたらしこみで表現されており,琳派らしい作品であった.


松梅図 尾形乾山

尾形乾山の作品を見ているとどうしても尾形光琳のことを考えずにはいられない.

今回は光琳の作品の展示はなかったので,兄弟ならんでの展示もなかった.

乾山の描く梅は光琳が指導しただけあって,光琳梅である.

たらしこみも使われており,やはり光琳の影響を感じてしまう.


老松立鶴図 中村芳中

ユーモラスな表情の鶴とたらしこみの多用された松でほのぼのとした風景が描かれており,見るものをほっこりさせてくれる.

このような感情を抱かせてくれる鶴や松の絵はめずらしいのではないだろうか.


菊小禽図 酒井抱一

琳派の核となる三人のうちの一人,酒井抱一の作品である.

菊や小鳥の構図がおもしろい.

酒井抱一の作品は屏風のように大きなものより,掛け軸サイズくらいまでの作品のほうが良さが出ているように思う.


秋草図 酒井抱一

酒井抱一の作品を思いだすとき,そこには必ず月があるように思う.

中秋の名月であろうか,白抜きの満月が描かれている.

この作品には朝顔が描かれているのだがこの朝顔は,ずっと見たい見たいと熱望しているせいか鈴木其一の朝顔図屏風の朝顔に似ているように思えてくる.

鈴木其一は酒井抱一の弟子であるから,何かしら影響があるのかもしれない.


秋草鶉図 酒井抱一

秋草や鶉に注目すべきところだろうが,気になるのは上部の黒い月である.

この月の彩色には銀も使われているそうだ.

この黒と銀で明るい月を表そうとしているのがおもしろい.


月梅図 酒井抱一

梅の絵というと紅白梅図屏風に代表されるような光琳梅を思わずにいられない.

この月梅図は白抜きの満月を背負ったほっそりとした,しかし生き生きと枝を伸ばしている紅白梅である.

花は光琳梅と言ってもよいと思うが,どうどうと立ちそびえる紅白梅図屏風の梅とは異なるこの月梅図は酒井抱一にしか描けないのだろう.


仁徳帝・雁樵夫・紅葉牧童図 酒井抱一

この作品は三つの掛け軸を一つの作品としている.

民の竈から煙がのぼっていないことに気付き,一時期,税を免除し,倹約に努めたという仁徳天皇の逸話を元にしているとのことである.

私はこの逸話を神武天皇や雄略天皇と混同してしまう.

神武天皇の国見や雄略天皇の堅魚木の逸話あたりで混乱しているのだろうと思うが,なかなか正確に覚えられないものである.


寿老・春秋七草図 酒井抱一

寿老の図,春の七草図,秋の七草図の三つで一作品を構成している.

中央で山羊に乗って振り返る寿老は何か逸話があるのだろうか.

両脇の春秋の七草図によって遠近感を感じる.

何より七草は生命力を感じるほど美しい.


牡丹図 鈴木其一

個人的に鈴木其一の作品は色づかいが好きだ.

琳派も酒井抱一から鈴木其一までいくとデザイン性よりも写実性が強くなっていくような気がする.

画面いっぱいの牡丹の足元にそっと咲くたんぽぽが可愛らしい.


2章:琳派に学ぶ

満月光 加山又造

千羽鶴 加山又造

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加山又造の作品は一目見ただけで彼の作品ではなかろうかと思うくらい特徴的だ.

あまり私の好みではないのだが,忘れられないインパクトがある.

そして,彼も琳派の強い影響を受けていることがはっきりと分かる画風である.


3章:秋の彩り

秋彩 東山魁夷

川端康成に「京都は今のうちに描いてもらわないと…」と言われたことがきっかけで作成されたそうで,各四季を描いた四部作のうち秋の絵である.

百人一首発祥の地とされる小倉山の秋を描いたという作品である.

赤と黄色に染まった木の向こうに青い小倉山がそびえているのだが,現実にありそうな風景でいつか見てみたいと思わせてくれる.


奥入瀬()  奥田元宋

輝く赤の美しい紅葉の風景である.

奥入瀬とのことではあるが,この世の光景とはとても思われない.

こんなに美しい圧倒的な紅葉の図は初めて見たかもしれない.
在原業平の「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」を思い出してしまった.
描かれている地や川に紅葉が浮いているわけではないのだが。


以上が,概要である.

琳派関係の特別展ではなかなか出会えないタイプの作品が多く,楽しめた.

また,明治時代以降の作品はあまり鑑賞してこなかったが,いいなと思える作品にも出会えたのもよかった.


今年は琳派YEARであるので,まだまだ琳派作品を楽しめそうである.

時間を作っていきたい.


by Allegro-nontroppo | 2015-09-21 20:00 | 博物館
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