琳派好きとしては見ないわけにはいくまいと久しぶりに見ることにした. 琳派の画風は俵屋宗達から尾形光琳,そして酒井抱一へと生きた年代の違う人間が継承してきたことが一つの特徴といえるだろう. その中で「風神雷神図屏風」は俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を尾形光琳が模写し,尾形光琳の模写をさらに酒井抱一が模写したという,琳派好きにはたまらない作品群である. 以上の話は知っていたが,それぞれの「風神雷神図屏風」の違いや特徴は知らなかったので大変おもしろく見させて頂いた. それぞれを鑑賞する機会があった時にはよく注意してみたい. さすがに並べてみることはよっぽどの展覧会がない限り無理があるであろうから,ちょっと見ただけではとても気づかなかったことであろう. ちなみに宗達の「風神雷神図屏風」は昨年の特別展栄西と建仁寺(感想はこちら→)で鑑賞させて頂いた.
各地で様々な催しが行われるということだが,その催しの一つにいそいそと出かけた. 琳派400年記念―箱根“琳派”の誕生― 岡田美術館所蔵 琳派名品展 ~知られざる名作初公開~である. もたもたしているうちに終わってしまったが,感想を記しておきたい. 場所は日本橋三越本店 新館7階ギャラリーである. こちらのギャラリーを利用させていただくのは初めてである. 昔はデパートでも美術展など行われていたが,最近はすっかりなくなってしまったと思っていた. 三越はまだまだ体力に余裕があるのであろう. 今後も楽しみである. さて,ずいぶん前置きが長くなってしまったが,印象にのこった作品の感想を以下に記しておく. 柳橋水車図屏風 柳と水面を除けばすべて金泥,金箔,金砂子である. 柳や水面も黒色に近い色使いで,パッと見は黒と金の世界であり,かなりインパクトがあった. 解説にもあったが柳,橋,水車の取り合わせはやはり宇治,特に源氏物語宇治十帖を思い出してしまう. 作者及び作成集団は判明していないそうなので,解明が期待される. 菊図屏風 尾形光琳 画面には白菊の花,茎の緑と黒,そして白い地面と背景の金のみの彩色で,あとは空間と菊の配置というデザインである. どうしても光琳の「燕子花図屏風」を思い出してしまうところである. ただし,菊の花弁は一枚一枚,胡粉でもりあげて描かれており,多少のデフォルメを感じる「燕子花図屏風」とは異なっているように思われる. 夕顔・楓図 尾形乾山 尾形乾山といえば,光琳の弟で特に陶工として有名だったはずだが,こちらは図である. しかし,工芸品で見かける乾山の絵の作風となんら変わりないように見受けられる. 深く考えたことはなかったが,このデフォルメしたような乾山の作風は光琳の影響だろうか. 光琳が乾山のために作った植物の書き方をまとめたもの(見本だったかもしれない)を見たことがあるから,間違いないとは思うが. 白梅図 酒井抱一 まさに「光琳梅」という作品である. 枝はたらしこみで描かれており,まさに「琳派」という作品だと思う. 光琳へのリスペクトを感じる. 風神図 酒井抱一 この風神図はもちろん昨夜の「美の巨人たち」で取り上げられたものではないが,宗達または光琳の「風神雷神図屏風」を模写したものの一つだろう. しかし,「美の巨人たち」によれば,抱一の図屏風は衣装が金装飾などで華やかになっており,雲が風に吹き散らされているようなところが特徴とされていたが,この風神図ではそのようなところは感じられない. この「風神図」に伴われていた,「雷神図」は見つかっていないということであるが,見つかればどのような意図で作成されてか分かるのであろうか. 桜図 酒井抱一 桜の枝はたらしこみで描かれており,「琳派」らしい. しかし,桜の花や葉は繊細に詳細に描かれており,抱一らしいと感じさせてくれる. 抱一の作品は夏草,秋草を目にする機会が多いが,春の花もいいものだ. どちらかというと春の方が好みである. 木蓮小禽図 鈴木其一 枝が淡く描かれているせいか,木蓮の花に力を感じた. 解説にあるように表情豊かに描かれているせいだろうか. この力は「燕子花図屏風」にも感じられたのだが,色彩は非常に落ち着いたトーンで派手なところは全くないし,サイズも一幅しかないのに不思議である. 名月に秋草図 鈴木其一 この作品にはショックを受けた. 大変に私の好みである. 正直,琳派好きながら,琳派の描く夏草,秋草図はいまいち好きになれなかった. 三幅のうち中央に満月と空のみ配置しているおかげで強烈に遠近感を感じる. この遠近感を空と地面の淡い色で,そして秋草もくっきりと繊細に描かれることで 助けているのだろう. なんにせよ構図がこの図の勝因である. 本当に素晴らしいものを見せて頂いた. 燕子花図屏風 神坂雪佳 光琳の「燕子花図屏風」に影響を受けたことは間違いない. サイズは屏風としては小ぶりである. 他の作品を見ながら思うことではないがやはり光琳の「燕子花図屏風」が自分にとってはNo.1であることを再認識した. 初月屏風 加山又造 この作品の良し悪しはよく分からない. ただ,この展示会の中で一番力を感じさせてくれる作品であった. どこに展示されていても素通りできる作品ではない. ただ,素人にはどのあたりが琳派らしいのかよく分からないところが残念である. 以上が私の印象に残った作品である. この他にも乾山のやきものや光琳図案の蒔絵などの工芸品も多数出品されていた. この展示会を通して,酒井抱一と鈴木其一の素晴らしさを認識させて頂いた. 本当にありがたい話である. 余談だが,インターネットで酒井抱一と鈴木其一と他の作品を探してみてショックを受けた作品がある. 鈴木其一の「朝顔図屏風」だ. インターネットでこれほどの衝撃なのだから,本物ならばどれほどだろうと思う. いつか日本で展示してもらえないだろうか. 実際には行った方が早いのかもしれない. とりあえずは春の「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」を楽しみにしよう.
by Allegro-nontroppo
| 2015-02-08 20:45
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