場所は渋谷区立松濤美術館である. 区立の美術館があるなどと驚いてしまったが,福岡にも福岡市博物館があり,あの有名な金印を所蔵していることを考えればそんなものかもしれない. 福岡市よりも渋谷区の方が人口は多そうだ. さて,今年,奈良国立博物館では「醍醐寺のすべて」展が行われていたようである. 私は行くことはできなかったが話題になっていたということは聞こえてきていた. その「醍醐寺のすべて」展と比べれば規模は縮小するであろうが,興味はあるので出かけてみることにしたのである. 以下に印象的であった出品物について感想を記す. 第1章 み仏のおしえ 過去現在絵因果経 釈迦の善行や事績を経文と絵で描いた絵巻である. 字の読めない者にも布教しようという目的で作成されたものであろうか. 解説には絵は古拙であるとあったものの非常に分かり易く描かれており,釈迦の物語を理解することができた. 紺紙金字般若波羅密教 随喜品 伝菅原道真筆 大日経開題 空海筆 金光明最勝王経 伝小野道風筆 経文の良しあしはよく分からないが,菅原道真の字が一番好みである. もちろん「伝」とあるので本当かは分からない. 第2章 み仏のすがた ~密教の彫刻と絵画~ 閻魔天像 鎌倉時代以降,流布する地獄の王としての姿ではない. 平安時代後期を降らない作品とのことである 従って,非常に穏やかな顔つきでどこか女性的でもある. 水月観音像 帝釈天(白描十二天像の内) 水天(白描十二天像の内) これら三作品は白描画である. 水月観音像は筆のタッチから仏画でありながらどこか水墨画のようなイメージである. 帝釈天と水天は所々に色注として色がのせられているのが面白い 第3章 み仏とつながる ~密教法具類~ 金銅装獅子文説相箱 新調した箱に獅子金物を取り付けているという. 元々はどのような箱に取り付けられていたのか想像してみるのも楽しい. 第4章 醍醐にひらく文雅 ~桃山・江戸時代の絵画と工芸品~ 扇面貼付屏風 俵屋宗達筆 待ってました. お久しぶりの琳派作品である. 春の栄西と建仁寺展以来か? ならば,「風神雷神図屏風」俵屋宗達筆が最後であったということだ. 扇面を添付しているというところが非常に宗達らしいと思う. その扇面の画題は琳派らしく伊勢物語など. 楓図屏風 山口雪渓筆 山口雪渓は恥ずかしながら初耳である. 楓が全面に配されており,非常に今の季節に適した作品である. 楓が主役となる屏風は今まで見たことがなかったが,良いものである. 豊国大明神 神号 豊臣秀頼が揮毫したという. 味があってとても八歳とは思えない. 次期将軍としての教育あってのものだろうか. 織田信長黒印状 醍醐寺年預宛 豊臣秀吉書状(席次の次第) 徳川家康書状「真言宗諸法度」 戦国時代を代表する三人の直筆書状である. 織田信長の書状には有名な「天下布武」の印がある. 三人の字を見比べてみようと思うが,なかなか違いは分からなかった. 信長は戦勝祈願の返礼文である. 秀吉は関白就任後,准后や親王の席次に関わるもめ事に対する裁定文である. 家康は真言宗諸法度ということで,この三書状には内容に各人の政策に対する個性が表れているように思う. 以上が印象的な出品物への感想である. 土曜日に出かけたのだが混雑などは全くなく,快適に鑑賞することができた. 次回の特別展は「天神万華鏡」という天神様=菅原道真に関する絵画・版画が出品されるとのことでなかなか面白い切り口ではないかと思っている. 時間があれば出かけてみたいものだ.
by Allegro-nontroppo
| 2014-11-18 19:18
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