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藤原道長の金峯山詣

え連続講演 「伝えたい 世界遺産『吉野』の魅力」(第4回)「藤原道長の金峯山詣」を受講した.

講師は中東洋行氏(吉野町教育委員会事務局社会教育課)である.


1
10181126日 土御門殿

「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」

・誇っている歌であるが,準備していたものではない(道長が言っている).

・事前に藤原実資に和してほしいと依頼していた.


2
.道長が生きた時代

源氏物語のような世界は女性視点であり,政治(男性の昼の世界)に関しては反映されておらず,女性は男性の昼間をよく知らなかった.

男性または政治の世界では

・天皇の儀式は重要なものであり,複雑な手順を覚えている必要があった.

・深夜(10時,11時)までの会議・仕事が続くこともあった→場合によってはそのまま翌日の仕事へ(超多忙生活)

労働基準法などなく,仕事を選ぶ自由もない,身分が保障され続けるわけでない.

一族の繁栄のため,少しでも身分をあげるため,努力し続ける,貴族は登りつめるしかない.

手を抜けばすぐに負けてしまう世界であった.


食生活は貴族でも質素(仏教の影響で肉魚を避ける傾向)であるが,一般庶民に比べれば恵まれている.

世界中で平均気温が低く,飢饉の起こりやすい時代であった.


田舎(農民)はぼろぼろの家で,体にも肉がつかないような生活であった.


平安京であっても,衛星環境はあまりよくない(平安京は平らな土地であるため,下水用のどぶさらいが必要).

病気の大流行(パンデミック)や栄養不足に陥りやすい状態.

死体が道に転がっている.

台風対策もできない.

神仏を信じるしかない→呪いも日常茶飯事.

阿弥陀信仰が流行りはじめる.

→道長の死後,末法の世がおとずれる.


3
.道長,その波乱万丈な半生

・公卿でない父のもと,脇役に生まれる(966年兼家の五男・末っ子).傍流の家.

道長が生まれたころ,実資は蔵人頭.最初に会ったときは道長を呼びすてにしていたほどだったが….

姉 詮子が天皇に嫁ぐ.

→父 兼家が宮中に入ることができるようになる.

→道長26才(父は絶世期)は出世コースへ.

流行病でライバルがどんどん亡くなる.

→道長30才 右大臣(人が足りなかった).

病気になった時の日勤は「本人もここまで登れると思っていなかった」というプレッシャーが感じられる.

・娘の彰子が女御となる(時に齢,12才).

→甥の娘(定子…天皇からの寵愛をうけている)に第一皇子が生まれ,また姉(詮子)も亡くなってしまう.

→定子は亡くなるが,天皇は定子の妹を寵愛する.


4
.道長×吉野のコラボレーション

・彰子の立后と頼通の元服,そして道長の焦り.

平安時代,吉野は憧れの地→末法の世界を救う弥勒下生の地として中国にも名声が届くほど(役行者).

人々を救う仏様とそこで修行するお坊様がいる場所だから弥勒下生の地として信じられていた.

死んだ後にいい所に行けるように,彰子に子が産まれるように(子守信仰…水分神社)善行を積む…弥勒のために経文を埋めておく(末法の世で仏教が忘れ去られたときに掘り起こして弥勒の助けとなるように,仏様の教えが戻りますように).

1週間かけて金峯山寺へ(非常に神聖な地であり,世俗にまみれた人間が金峯山に入ると神仏を怒らせてしまうので,事前に23ヶ月,お浄めをしてからでないと山には入れない).

82日出発,810日 山上ヶ岳(16001700m級)の頂上で埋経(霧がかかっていて景色を見ることができなかった).

道長は大方,歩いて登ったという説が優勢(修験者と同じルートを通ったようである).

金峯山寺の前身寺院(野際)で宿泊している.

道長の経筒が非常に良好な状態で発見される.

→「陶製の経筒に入っていた?」または「小さな塔に経筒及び経文を入れていた?(平安時代の層から飾りなど一部が発見されている)」という説はあるが検証のしようがない.

経筒にはお供の名前や埋経の瞬間までなどを詳しく書かれている.


5
.そして,あの歌に至る

吉野行から1年後,赤ちゃんが生まれる(第一皇子には後見人がいない).

彰子の妹も別の天皇家の人に嫁がせる.

道長が実資を呼びつけて,必ず答えるように依頼する.

「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」

とても素晴らしくて歌で答えることはできないと,みんなで数回繰り返すことにした.


努力はし続けたが,どうしようもない(娘に子供が産まれるように)部分で吉野の霊験にすがった.


道長が苦労して登りつめていったという部分は知っていたが,吉野との関わりの部分についてはあまり知らなかったので非常に参考になった.


by Allegro-nontroppo | 2014-10-04 19:39 | 講演会,シンポジウムなど
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