エボラ出血熱が流行している. 今回の流行は今までとは違い,都市部で流行しているために防除が追い付かないようで,終息の見通しも立たないとのことだ. このエボラ出血熱の病原体であるエボラウイルスは致死率が50-80%という死亡率を持つ種類も存在する一方で,有効な治療薬がないことが問題である.
本当にそうだろうか?
日本ジェネリックのHP抜粋してみた. 先発医薬品とは新薬と同じ意味であるから,これは新薬の開発の話でもある. 開発に200~300億円かかり,さらに生産にもお金がかかる. その一方で今回の流行では2014年8月11日までのWHOまとめによれば,感染疑い例も含め1975名が感染し,1069名が死亡(死亡率54%)している. 1976年の発見以来の大流行だというから,これまでの感染者は5000名を超えないのではないのだろうか. この規模で,また被害の対象がアフリカということから,例え治療薬開発にこぎつけたとしても,開発費を回収できないと製薬業者が断念していたとしても仕方ないように思われる. まさか,開発費を製薬会社にまるかぶりさせてでも開発させるわけにはいくまい. 以上を踏まえても,製薬企業を批判するのならば,現在開発中の治療薬の治験に謝礼金なしで参加するくらいの覚悟はもつべきである.
製薬会社は特に新薬開発という点で社会貢献をしていくべきだろう. ところが,製薬会社にもキャパシティというものがある. この世に存在する全ての病に対する治療薬を同時に開発など到底不可能である. 当然,優先順位というものがある. では,エボラ出血熱の優先順位は高かったのだろうか. エボラ出血熱の致死率はかなり高い. しかし,これまでの年間死亡者数でいうならば,そう高いものではないだろう. 例えば,インフルエンザや癌などエボラ出血熱より死亡者数の多い病気はいくつか思いつく. 人の命を数ではかるなという人道的な意見もあるかもしれないが,治療薬の開発順序をつける際にこれ以上の理由は無いように思う. また,現在,治験実施中の薬はこれらの病気が圧倒的に多いのだ. 治験中であるということはイコール開発中ということである. 必要とする人の多い薬を先に開発しているということであろう.
さて,まだエボラ出血熱に対する治療薬はないと言われているものの,開発していないわけではない. 例えば,今回,アメリカ人医師に投与された未承認薬である「ZMapp」である. また,富山化学工業の「ファビピラビル」はインフルエンザの治療薬として国内で製造販売承認を取得しているが,エボラ出血熱にも効果があるのではないかと期待されている. 終息の見込みがない今の状態はさらに,治療薬の開発に加速をかけると思われる.
例えば,「希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器の指定制度」のような支援が受けられればよいと思う. エボラ出血熱の感染者は今のところ国内にはいないためこの制度を適用することはできないが,WHO,FDA,PMDAなど,連携してこのような制度をつくることができればいいと思う. それが,エボラ出血熱のみならず今後の新たな病気の治療薬開発に役にたつものと思う.
理不尽な記事だと考えた人が他にもいたのだろうか. 「業界の怠慢」を「市場の失敗」と言い換えたところで,近視眼的であることには変わりない.
by Allegro-nontroppo
| 2014-08-16 20:09
| あれやこれ
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