突然,大学時代の所属研究室の恩師から電話があった. 曰く「高松塚古墳壁画修理室公開の入場券があるので行かないか」とのことである. 日程を確認すると25日土曜日だとおっしゃる. 行きたくないわけはないが,あまりに急すぎて諸々の手配が間に合うかが問題であった. 結果としては,日程の都合はついたし,列車の切符も手に入った上,その日のホテルの予約までできたので,1泊2日の飛鳥・京都旅行と相成ったわけである. 京都にはこちらも所属研究室の先輩もいらっしゃったので,その方も行くことになった. 旅の詳細は以下に記す. 壁画修理室は国営飛鳥歴史公園の中にある. たった1か月前に明日香村を訪れて高松塚古墳から鬼の雪隠に向かう際,脇を通ったから一切迷うことはない. 壁画修理室に向かう前に恩師と落ち合い,お茶を飲むこととなった. たった1か月前に明日香を訪れたという話をしたところ,恩師は二点指摘された. 一つは今回の高松塚古墳についてである. 被葬者,副葬品等についてもっとよく調べてみるように言われた. もう一つは談山神社について. こちらは藤原氏との関わりをよく調べて見るように言われた. その他,今年に入ってから訪れた史跡として,稲荷山古墳について盛り上がっていると隣の先輩がこちらを白い目で見ておられた. 研究室はおおざっぱに分けてしまえば理系であるし,研究内容も古墳のこの字も出てくるようなものではない. 外から見たらどういう集まりと思われるだろう. 答えはただのオタクの集まりである. お茶をすませた後,いよいよ壁画修理室へ向かった. 受付をすませるとグループ札を受け取ることができ,グループ毎に時間になると呼ばれる. 1グループ,20人以下だったと思う. まず,講義室でパワーポイントを使った事前ガイダンスが行われた. 内容は高松塚古墳の歴史,壁画劣化の原因,修復方法や今後の予定などであった. 被葬者について突っ込んだ内容は何もなし. やはり,壁画に偏った内容ではあった. 事前ガイダンス終了後,一旦外に出て,ついに壁画修理室に入ることとなる. 壁画は手前に四神と飛鳥美人,二列目にその他官人の群像図などで一番奥が天文図であったと思う. 壁画を斜めや立てかけるような展示への配慮は特になかったが,修復室の見学ということなのでそんなものであろう. ただし,そのせいできちんと見えるのは一番手前の列のみで,一番奥の列などは展示室にある各壁画の写真でそれと分かるのみである. 壁画については素人目のせいか,はたまた壁画まで遠く離れてしまっているせいだろうかカビなどの影響はよくわからないくらいになっていた. カビについては修復が済んでしまっているのかもしれない. 思ったより壁画の鮮やかさを感じることができなかったが,解説では,発見当時の壁画は湿度の問題で湿っていたらしく,乾燥しているときより数段に鮮やかに見えていたという. これについては発見者の網干善教氏の著書でも色の劣化に触れられているので湿度のみの問題ではないと思う. 案内係を兼ねた担当の方に,壁画についての質問をすることもできたのでどの程度修復するつもりか確認してみた. 高松塚古墳の南壁画は江戸時代に盗掘孔が開けられてしまっているため,何が描かれていたか分からない. 順当にいけば四神の朱雀が描かれていたはずである. これを修復するつもりがあるか確認したかったのだ. 答えとしては先に出た網干氏の発見当時の姿に修復する予定ということであった. その際のコメントとして,壁画(石室)は現地保存を目指しているが,不可能という意見もあり,現地に戻す予定が伸びてしまうかもしれないとのことであった. ちなみに不可能の理由は石室の劣化によりその重さに耐えられず割れてしまう可能性があるとのことであった. このときは何も考えずに聞いていており,突っ込んでいないことまでよく説明してくれるものだと感心していたが,同年3月27日のニュースを見て納得した. 当分の間,壁画は古墳の外で保存・公開すると文化庁が決定した模様である. (ニュース記事: 日本経済新聞,読売新聞) 当分の間というのは,あってないような期限であろうから,よっぽどのことがない限り現地保存は夢のまた夢ということだろう. それにしても,係の方がわざわざ上記のようなコメントをくれたというのは,すでにこのときに古墳の外での保存がある程度決まってしまっていたからこそなのかもしれないと思うと納得いく. このように10分程度の観覧時間が終わった. このために奈良までわざわざ行ったと思うと苦笑してしまうが,なかなかできる体験ではないし,行ってよかったと思う. 今回の修理作業室公開に関する文化庁の報告ページは こちら→ この日は京都で宿泊. 飛鳥・京都旅行の2日目についてはまた次回.
by Allegro-nontroppo
| 2014-04-28 19:50
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