さて,「春日大社第六十次式年造替記念シンポジウム 伊勢から春日へ」について,前記事の続きである.
第二部終了後,休憩をはさみ,春日大社・南都楽所による舞楽へ移った. 曲は「納曽利」. 基本的には,「納曽利」は二人舞であるが,一人舞の際は「落蹲」となる. しかし,南都楽所の場合は一人舞は「納曽利」で,二人舞は「落蹲」と呼ばれるとのことだ. よって今回は一人舞となる. 最近,舞楽,特に「納曽利」に興味があったので多少,期待はあったが,本当に「納曽利」であるとは! ラッキーである. 内容については,舞楽を生で見ること自体がはじめてなので,評価できるべくもないが,江戸時代に宮中にまで教えに行った(技術が廃れてしまっていたらしい)南都楽所であれば最高のものであったのだろう. 第三部は鼎談である. 鼎談を始める前にスペシャルゲストのさだまさし氏が一人でお話しされた. さだまさし氏と言えば,私にとってはNHKの「今夜も生でさだまさし」が印象的であるから,スーツで登場されたとき,普段のラフなイメージとは異なり驚いてしまった. さだまさし氏のお話の内容は,宮﨑康平氏(「まぼろしの邪馬台国」の著者)との思い出であった. 鼎談には先に講演された神宮大宮司様,春日大社宮司様,さだまさし氏が参加された. 神宮大宮司様のお話で印象深かったのは遷宮時の苦労話である. まず,遷御についてはTV媒体等で映像が流れていたが,出御以降については神宮大宮司様はほとんど映っていない. なぜなら,絹垣の中にいらっしゃり,ご神体を奉戴していらっしゃったからだ. 「足くらいは映っていたかも」と冗談まじりにおっしゃっていた. 神宮大宮司様は午後6時より参進したあと,そのまま御殿で待機をなさっていたというが,その時の恰好が衣冠束帯にさらに明衣(絹のエプロンのようなもの)をまとい,絹の手袋に絹のマスクのようなものをつけていらっしゃったという. しかも,衣冠束帯は冬物(通常ならば立冬以降に着るもの)らしい. これは,今後控えている別宮の遷宮がほとんど冬に行われるため,その際も着用できるようにとのことらしいが,正宮の遷宮は10月上旬であった. 近年,この時期はまだ夏なんじゃないかと思うくらい暑い. ご神体に最接近するためとはいえ,マスク,手袋,エプロンまでつけて冬服で出御の午後8時まで待機である. 暑くて暑くて仕方なかったとおっしゃっておられた. しかも,この衣類,8kgもあるそうである. さらに,出御を迎えて,いざ御殿の外へと出ると周囲は浄闇であるから,何も見えない. その中をご神体を担ぎ,階段を下りて行かなくてはならないのは非常に大変であったとおっしゃておられた. 万が一にも,段を踏み外そうものならことである. 足先で探り探りおりていったとのことであった. ところで,遷宮の奉賛金はリーマンショックの年から始め,東北大震災の年も含めて奉賛を呼びかけたとのことだったが,なんと予定より一年早く予定金額を集めることができたらしい. 厳しいときではあったが,そのような時だからこそ,奉賛しようと思った方々が多くいたのかもしれない. 春日大社宮司様は式年造替について補足された. ご神体は平成27年3月にうつし殿に移され,平成28年10月に戻られるとのこと. ただし,全部で16棟,修理する必要があるので,全てを終えるのに10年かかるらしい. なかなか大変だ. さだまさし氏は神宮遷宮の際に奉仕されたとのことなのでその時のご経験を語っておられた. ちょうど,出御の際に強い風が吹いたらしく,神秘的な何かの気配を感じたとのことである. それから,春日大社関係では造替奉賛コンサートを4年前から行われているそうだ. 今年も5月に行われるらしく,5月24日の「生さだ」は奈良から放送とのこと. 第四部は奉納である. 祝御造替の文字を書道家紫舟氏が奉納された. 紫舟氏といえば,神宮の「祝遷宮」の文字を奉納なさったことが記憶に新しい. 伊勢に行った際はいろんなところで彼女の文字を見たものである. また,大河ドラマ龍馬伝の題字も手掛けた方だ. 私は同一人物が手掛けていらっしゃたとは知らなかったが,言われてみると確かに同じ作風を感じる. そもそも,こんなにお若い女性だとはとても思わなかった. 今後は彼女の「祝御造替」の文字をいろんなところで見かけるのかな. 楽しみである.
by Allegro-nontroppo
| 2014-04-08 20:24
| アマテラスと伊勢
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